KuronumaTomomi

冬の残り香、春の兆し

ご近所の庭先で、今年もミモザが咲き始めました。

私にとっての春の訪れは、
まだ肌寒さの残る空気の中で、河津桜の蕾がふっくらしたのを目にしたとき。
「ああ、そろそろミモザも……」
そんなふうに、心の中で季節のバトンを受け取るのが、いつもの習慣です。

そんなある、柔らかな光が差し込む週末のこと。
不意に鳴った玄関のチャイムに応えると、
そこには、溢れんばかりのミモザを抱えた馴染みの方が、
柔らかな笑顔で立っていました。

丁寧にラッピングされた、ふわふわの黄色い塊。
それは、私のもとへ不意に届いた、贅沢な「春の贈り物」でした。

包みを解くのがもったいなくて、
しばらくそのまま、リビングに置いて眺めてみる。
春が来た嬉しさと、冬が静かに去っていく名残惜しさ。
その両方が入り混じったような、不思議で愛おしい時間。

意を決してリボンを解き、
一枝ずつ、花の向きを確かめながら器に生けていく。
ただそれだけに集中するひとときは、
日常の中にぽっかりと現れた、優しい贅沢なひととき。

春の香りに包まれながら、
今夜の「一皿」は、迷わずこれに決まりました。


今宵の一皿  Vol.3

九条ネギと鶏ささみのタルタル

冬の終わりを告げる、九条ネギの力強い香りを主役に。 しっとりと解した鶏ささみに、 これでもかというほど刻んだネギをたっぷり。 味付けは、シンプルに塩麹だけで。

素朴な一品だからこそ、器への盛り付けには少しだけ気合を入れて。 お気に入りの白ワインのグラスを傾ければ、 口の中に広がる冬の滋味と、目の前の春の色。

二つの季節が交差する、今夜だけの特別な晩酌です。