KuronumaTomomi

言葉が「食わせる」世界

朝の通勤電車。
少しだけ早起きして整えた心と体で、本の世界へと潜っていく。
一日が動き出す前の、私だけの静かな時間。

今のお供は、柚木麻子さんの『BUTTER』。
この小説、文字から立ち上る「美味しい気配」がすごいのです。
目で追っているだけのはずなのに、
濃厚なバターの香りが鼻腔をくすぐり、
じわりと口の中に唾液が溢れてくる。
まだ何もお腹に入れていない朝の空腹感も手伝って、
私の食いしん坊な想像力が、静かに、けれど強烈に刺激される。

かつて魯山人の言葉に惹かれたように、
私は「言葉」が持つ、味覚への訴えかけにも弱いみたいだ。
美しい器が料理を引き立てるように、
力のある言葉もまた、私たちに何かを「食わせて」くる。
本を閉じて電車を降りる頃には、
頭の中はすっかり、今夜の食卓への期待で満たされているのでした。


今宵の一皿  Vol.2

冬キャベツのロールキャベツ

寒い夜は、やっぱり温かいものが恋しい。
厳しい寒さの中で甘みを蓄えた冬キャベツは、春のものとは違う、滋味深い美味しさがある。
お出汁をしっかり効かせて、塩分は控えめに。途中でバターをひとかけら落とすのが、私のお気に入りの味変。
スープに溶け出す黄金色のコクを、
きりっと冷えた白ワインと合わせていただきます。