《JR恵比寿西口駒沢通り沿い編》
おっさんは、朝がはやい。
まだ真っ暗な時分に家を出て、近所の寺から響く6時の鐘の音を聞きながら駅へ向かう。
満員電車が苦手であることと、朝の時間が一番集中できるなど理由はいろいろ考えられるが、なんといっても通勤定期が10%も割引になることが早出のきっかけである。しかしそんな時間にもかかわらず、東京へ向かう電車は普通に混雑し、吊り革と自分の立つ位置を確保できないこともあるのだ。みなさん本当に朝っぱらからご苦労様でございます。
駅に降り立つのは7時少し前、ピークとは程遠いが、それでもバス停や地下鉄への乗り換えで大勢の人たちが、改札を足早に通り過ぎていく。おっさんは、その流れを外れて西口駅前ローターリーを抜け、駒沢通り沿いの牛丼屋に向かう。
およそ1年前の人間ドックで、スポーツ選手のような体格と迫力のある声の若い栄養指導女子に栄養不足を指摘され、体重減を得意げに話している場合では無いことを厳しく指摘された。
以来、おっさんの朝は栄養指導女子の教えに従い、牛丼屋で、ご飯、味噌汁、納豆、卵、焼魚の「特朝定食」を食べるのが習慣となっているのだ。勿論、牛丼屋を指定されたわけでは無いのだが….
「それで、健康になったの?」 確かに元気は出てきた。気力が満ちてくる実感はある。
ただ同時に、腹も出てくるのである。痩せて首も腕も筋肉がそぎ落ちた体に、腹だけが元気に膨らむのは鏡に映すと自分でも滑稽である。
それは自己責任で解消するとして、ここでもタッチパネル大活躍なのだ。
このチェーンは2023年から本格的にタブレットを導入、29年までに1,400店すべてに導入予定とのことだ。理由は、唐揚げなど店員の調理時間を確保するための施策。(なるほど〜)
このタブレット、今日の新聞では、60代でも46%が満足しているらしい。
今朝もぴこぴこ
朝の店内は、背広姿の老紳士から若いビジネスウーマン、現場へ向かうガテン系のお兄さんらで寡黙にピコピコとタブレットを押す大人たちで賑わっている。(たまに大声で騒ぐのは夜明かしのお嬢ちゃんとズボンを下げたお兄ちゃんグループだけだ。早く帰って寝ろよ〜)
先日の直木賞受賞作は、戦前から戦後にかけての東京・上野のはずれにあるカフェーが舞台。
そこに集う人々の個性、そこで交わされる会話や一人ひとりの心模様がしっとりと心に染みてくる。
人生の醍醐味って、こんな人とのふれあいなのかなぁ… ピコピコ
孤独にぴこぴこ画面をタッチしているうちに、人生も終盤である
20代後半から40代まで、神宮前の小さな喫茶店のマスター(常連は皆、ムッシュと呼ぶ)に大変お世話になったことを、ふと思い出した。

参考:〈日経MJ 2月6日(金曜日)〉、〈嶋津 輝著 カフェーの帰り道 東京創元社〉
写真:今宵の一杯 粉引の酒器・増田 勉、月見盆・富山 孝一